
警備業界で今、大きな動きが始まっています。
2026年9月16日、警察庁は深刻な人手不足が続く警備業界について、外国人材の受け入れを拡大するための検討を始めました。
具体的には、一定の技能を持つ外国人が日本で働くための在留資格「特定技能」と、2027年4月から始まる「育成就労」の対象分野に、警備業を追加するかどうかが議論されます。
ただし、現時点で「外国人材を特定技能で警備員として受け入れることが決まった」というわけではありません。
あくまで検討が始まった段階です。
今後は、
- どの警備業務まで外国人材に任せるのか
- どの程度の日本語能力を求めるのか
- 安全を守るためにどのような教育が必要なのか
- 警備会社がどのような受け入れ体制を整えるのか
といった点が重要な論点になっていくと考えられます。
今回は、警備業界で外国人材の受け入れ拡大が議論されることになった背景と、今後の警備業界に求められることについて解説します。
警察庁が警備業への外国人材受け入れ拡大を検討
2026年9月16日、警察庁は専門家を交えた検討会を設置し、警備業における外国人材の雇用拡大について議論を始めました。
背景にあるのが、警備業界の深刻な人手不足です。
報道によると、警備業を含む「保安職業従事者」は、仕事を求める人に対して求人の数が多い状態が続いており、有効求人倍率は近年5倍から6倍程度で推移しています。
こうした状況を受け、業界団体から外国人材の雇用拡大を求める声が上がっていました。
今回の検討会では、警備業を「特定技能」と「育成就労」の対象分野に追加するかについて議論されます。
警察庁は2027年1月ごろにも報告書を取りまとめたい考えと報じられています。
重要なのは、現時点ではまだ**「検討中」**であることです。
制度の対象になることが正式に決定したわけではないため、今後の議論や制度設計を確認していく必要があります。
なぜ警備業界は人手不足なのか
警備員は、私たちの生活のさまざまな場所で働いています。
たとえば、
- 道路工事での交通誘導
- 建築現場での車両誘導
- 商業施設の警備
- オフィスビルの警備
- 花火大会や祭りの警備
- スポーツイベント
- コンサート
- 駐車場警備
などです。
普段何気なく利用している道路や施設、イベントの裏側では、多くの警備員が安全を支えています。
しかし、警備業界では以前から人材確保が課題となっています。
警備員の仕事には、
「暑い・寒い屋外で働くことがある」
「立ち仕事が多い」
「夜勤がある」
といったイメージを持たれることもあります。
その一方で、社会では建設工事やイベント、商業施設など、警備を必要とする場所があります。
警備を必要とする仕事があるにもかかわらず、それを担う人材が十分に確保できない。
このギャップが、警備業界の大きな課題になっています。
現在も外国人が警備員として働くケースはある
「これまで外国人は警備員として働けなかったの?」
と思う方もいるかもしれません。
外国人だからという理由だけで、一律に警備員になれないわけではありません。
現在でも、就労に制限のない一定の在留資格を持つ人や、資格外活動許可など必要な条件を満たした外国人が、警備業務に従事するケースがあります。
一方で、警備業は現時点では「特定技能」の対象分野ではありません。
今回議論されているのは、
警備業そのものを特定技能や育成就労の受け入れ対象として位置づけるか
という点です。
これが実現すれば、外国人材が警備業界で働くための選択肢がこれまでより広がる可能性があります。
「特定技能」とは?
特定技能は、日本国内で人材確保が難しい産業分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れるための在留資格です。
現在、さまざまな産業分野で外国人材が特定技能として働いています。
今回の検討では、警備業についても、その対象分野へ加えることが適切かどうかが議論されます。
ただし、警備は人や財産の安全に直接関わる仕事です。
そのため、単に人手が不足しているから対象に追加するだけではなく、
- 必要な技能
- 教育方法
- 日本語能力
- 業務範囲
- 安全管理
などを慎重に検討する必要があります。
2027年4月から始まる「育成就労」とは?
今回もう一つ重要なのが「育成就労」です。
育成就労制度は、現在の技能実習制度を発展的に解消して設けられる新しい制度で、2027年4月1日から施行予定です。
厚生労働省によると、育成就労制度は、日本国内で人材確保が難しい分野について、外国人材を3年間の就労を通じて特定技能1号水準まで育成するとともに、人材を確保することを目的としています。
つまり、
働きながら技能を身につけてもらい、その産業を支える人材として育成する
という考え方です。
今回、警備業についても、この育成就労の対象に追加するかどうかが検討されています。
どんな警備業務を外国人材に任せるのかも議論へ
警備といっても仕事内容は一つではありません。
今回の検討では、外国人材がどの警備業務を担当できるようにするのかについても議論される見通しです。
報道では、
- 施設警備
- 交通誘導
- 現金や貴金属などの運搬
といった業務について、どこまで外国人材に任せるのかが論点になるとされています。
それぞれの警備には異なる知識や能力が必要です。
施設警備
施設警備では、商業施設やオフィスビルなどで、
- 出入口の確認
- 巡回
- 来館者への案内
- 異常の確認
- 緊急時の対応
などを行います。
利用者から質問を受けることもあり、日本語でのコミュニケーションが必要になる場面があります。
交通誘導警備
交通誘導警備では、
- 車両への合図
- 歩行者への声かけ
- 自転車の誘導
- 工事車両の出入り確認
- 現場スタッフとの連携
などを行います。
一瞬の判断が事故防止につながる仕事でもあります。
単に誘導棒を振るだけではなく、周囲の状況を理解し、相手へ正確に情報を伝える必要があります。
運搬警備
現金や貴金属などを運搬する警備では、扱うもの自体に高い価値があります。
そのため、安全管理や警備上のルールを正確に理解する必要があります。
どの業務まで外国人材へ任せるのかについては、安全面を含めて慎重な検討が必要になります。
なぜ「日本語能力」が重要な論点になるのか
今回の検討会では、外国人材にどの程度の日本語能力を求めるのかも議論される予定です。
警備員の仕事では、日本語でのコミュニケーションが安全に直結する場面があります。
たとえば交通誘導警備では、
「車両が出ますので少々お待ちください」
「こちら側をお通りください」
「足元にお気をつけください」
といった声かけを行います。
イベント警備では、
「入場口はこちらです」
「こちらは通路になりますので、立ち止まらずにお進みください」
など、多くの来場者へ案内することがあります。
さらに、緊急時には、
「何が起きたのか」
「どこで起きたのか」
「けが人はいるのか」
などを責任者へ正確に報告しなければなりません。
つまり、警備員に必要なのは日常会話ができることだけではありません。
安全に必要な情報を理解し、正確に伝える力
が求められます。
警備員同士のコミュニケーションも重要
日本語能力が必要になるのは、一般の方への声かけだけではありません。
警備現場では、警備員同士の連携も重要です。
たとえば、
「車両が一台向かっています」
「こちら側が混雑しています」
「体調不良の方がいます」
「責任者へ連絡してください」
など、短時間で情報を共有する場面があります。
ここで伝達内容を誤解すると、安全に影響する可能性があります。
外国人材を受け入れる場合には、日本語教育だけではなく、
- 警備現場で使う言葉
- 報告方法
- 緊急時の表現
- 無線でのやり取り
など、実務に合わせた教育も重要になるでしょう。
人手不足だからといって「誰でもいい」わけではない
警備業界が深刻な人手不足だからといって、
「働いてくれる人なら誰でもいい」
という考え方で人材を確保することはできません。
警備員は人の安全に関わる仕事です。
これは日本人でも外国人でも同じです。
必要なのは、
- 警備に関する教育
- 現場ルールの理解
- コミュニケーション
- 安全確認
- 報告・連絡・相談
- 責任感
です。
外国人材の受け入れが広がったとしても、人数だけ増やせば人手不足が解決するわけではありません。
受け入れる警備会社側にも、適切に教育し、安全に働いてもらえる環境をつくる責任があります。
外国人材への教育体制も重要になる
警備員として働くためには、必要な教育を受けなければなりません。
未経験で警備員になる人は、まず法定の新任教育を受け、警備業務の基本を学びます。
外国人材を受け入れる場合にも、同じように警備員として必要な知識を理解してもらう必要があります。
ただ、日本語を母語としない人の場合は、
「説明したから理解しているはず」
では不十分なケースも考えられます。
たとえば、
- 図や動画を使う
- 分かりやすい日本語を使用する
- 実際の動作を見せる
- 理解できているか確認する
- 繰り返し研修する
など、教育方法にも工夫が必要になるでしょう。
多言語化だけでは解決できない
外国人材を受け入れると聞くと、
「マニュアルを翻訳すればいいのでは?」
と思うかもしれません。
もちろん、多言語化は有効な方法の一つです。
しかし、警備業務ではマニュアルだけでは対応できない場面があります。
交通量、人の流れ、天候、工事状況などによって、現場は常に変化します。
そのため、
「この場合はこうする」
という知識だけでなく、
状況を理解し、適切に報告・相談できる環境
をつくることも重要です。
外国人材と一緒に働く日本人スタッフ側にも、伝え方やサポート方法を学ぶ必要が出てくるかもしれません。
外国人材の受け入れは警備業界を変えるきっかけになる?
今回の議論は、単に外国人警備員を増やすという話だけではありません。
これまでの警備業界の働き方や教育方法を見直すきっかけになる可能性があります。
たとえば、
- 誰でも理解しやすいマニュアル
- 動画を活用した教育
- デジタルでの情報共有
- シフト管理の効率化
- 業務内容の標準化
- 多言語対応
- キャリアアップの仕組み
などです。
外国人材にとって分かりやすい仕組みは、日本人の未経験者にとっても分かりやすい仕組みになる可能性があります。
結果として、警備業界全体の働きやすさや教育の質を高めることにもつながるでしょう。
人手不足への対応は外国人材だけではない
警備業界の人手不足を考えるうえで、外国人材の受け入れは一つの選択肢です。
しかし、それだけですべての問題が解決するわけではありません。
警備業界自身も、
「働きたいと思ってもらえる環境」
をつくっていく必要があります。
たとえば、
- 柔軟なシフト
- 休憩環境
- 暑さ対策
- 適切な教育
- 資格取得支援
- 働きやすい勤務管理
- 給与や待遇
- キャリア形成
などです。
人を募集するだけではなく、
働き始めた人が安心して続けられる会社をつくること
が重要です。
DXも人手不足解消の重要な取り組み
人手不足というと、すぐに、
「警備員をもっと増やさなければ」
と考えがちです。
もちろん人材確保は必要です。
しかし同時に、
今いる人が効率よく働ける仕組み
をつくることも重要です。
たとえば警備会社では、
- シフト管理
- 警備員の配置
- 勤怠管理
- 日報
- 業務連絡
- 現場情報の共有
など、多くの管理業務があります。
これらをデジタル化することで、管理担当者の負担を減らし、警備員へのサポートなど、人にしかできない仕事へ時間を使えるようになります。
外国人材を含め、多様な人が働くようになれば、こうした情報管理の重要性はさらに高くなるでしょう。
ガードアクシスが考えるこれからの警備業界
ガードアクシスでは、
「警備のシゴトを、もっとスマートに。」
という考えのもと、警備業務のDX化や働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
警備業界の人手不足は、一社だけで解決できる問題ではありません。
少子高齢化などによって働き手が減っていく中で、これまでと同じ方法だけで人材を確保することは、今後さらに難しくなる可能性があります。
だからこそ、
- 若い人
- 学生
- Wワーク
- シニア世代
- 女性
- 外国人材
など、さまざまな人が警備の仕事を選択できる環境を整えていくことが大切だと考えています。
ただし、対象を広げるだけでは意味がありません。
どんな人でも必要な教育を受け、ルールを理解し、安全に仕事ができる仕組みが必要です。
外国人材が増えても「人が守る仕事」であることは変わらない
AIやDXが進み、外国人材の受け入れが広がったとしても、警備の仕事の本質が大きく変わるわけではありません。
警備現場では、
目の前にいる人を見て、
「困っていないか」
「危険がないか」
「何かいつもと違うことはないか」
を判断する必要があります。
そして必要なときには声をかけ、安全な方向へ案内します。
最後に安全を守るのは、人です。
だからこそ、国籍にかかわらず、一人ひとりの警備員をしっかり教育し、安心して働ける環境を整えることが重要になります。
今後の議論に注目
2026年9月16日に始まった今回の検討は、まだスタートしたばかりです。
今後、
- 警備業を特定技能の対象に追加するのか
- 育成就労の対象にするのか
- 対象となる警備業務
- 求める技能水準
- 日本語能力
- 教育方法
- 受け入れる警備会社の要件
などについて議論が進んでいくと考えられます。
警察庁は2027年1月ごろにも報告書をまとめたい考えと報じられています。
制度が正式に決定した場合には、警備業界にとって大きな変化になる可能性があります。
今後の動きを引き続き確認していく必要があります。
まとめ|外国人材の受け入れ検討は警備業界の人手不足を考える大きな動き
2026年9月、警察庁は、警備業を「特定技能」と「育成就労」の対象分野に追加するか検討を始めました。
背景には、警備業界で続いている深刻な人手不足があります。
ただし、現在はまだ検討段階です。
外国人材の受け入れ拡大が正式に決まったわけではありません。
今後は、
- 施設警備
- 交通誘導
- 運搬警備
などのうち、どの業務を対象とするのか、日本語能力をどの程度求めるのかなどが議論される予定です。
警備は、人の安全を守る仕事です。
そのため、人手不足だからといって人数だけを増やせばよいわけではありません。
日本人・外国人を問わず、必要な教育を受け、ルールを理解し、安全に仕事ができる環境をつくることが重要です。
そして、人材確保だけではなく、DXによる業務効率化や働きやすい環境づくりも同時に進めていく必要があります。
ガードアクシスでは、「警備のシゴトを、もっとスマートに。」という考えのもと、警備業務のDXや人材育成、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
これから警備業界がどのように変わっていくのか。
外国人材の受け入れをめぐる今後の議論にも注目していきたいと思います。
参考情報
本記事は、警備業界における外国人材の受け入れ拡大に関する報道内容を参考に、ガードアクシス独自の視点を加えて作成しています。
参考動画:
YouTube「警備業界で外国人雇用拡大を検討 警察庁が有識者会議を設置」
https://www.youtube.com/watch?v=RTml3IBo_co
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。制度の内容は今後の検討によって変更される可能性があります。最新情報は警察庁や関係省庁の発表をご確認ください。