警備計画書とは?作成の目的と重要性
イベントの安全な運営に必要となる警備計画書は、警備員の配置や来場者の誘導ルート、緊急時の対応策などを明確にし、安全対策を体系的に整理するための公式な書類 です。
しかし、「どんなイベントに必要なのか?」「作成しないとどうなるのか?」と疑問を持つ主催者も多いでしょう。
警備計画書の主な役割
警備計画書は、以下の3つの役割を担います。
① イベントの安全確保
来場者の安全を守るために、警備員の配置・誘導ルート・緊急時対応を事前に計画 します。
例えば、会場の入退場時には混雑が発生しやすいため、適切な警備配置がないと将棋倒しのような事故につながる恐れがあります。
② 警察・自治体との連携
道路を使用するイベントや大規模な集客が見込まれる催しでは、警察や自治体への申請が必要 になります。
警備計画書を提出し、交通規制や警備体制の調整を行うことで、スムーズな運営が可能 になります。
③ 緊急時の対応策の明確化
事故や急病人の発生時に、警備員が適切に対応できるように行動マニュアルを準備 します。
火災・不審者・怪我人など、あらゆるリスクを想定し、対応フローを策定することが重要です。
なぜ警備計画書が必要なのか?
警備計画書がないと、以下のような問題が発生します。
1. 事故・混乱の未然防止
大規模イベントでは、来場者の集中による混雑やトラブルが発生する可能性 があります。
- 入場時の混雑で将棋倒しの危険がある
- 不審者が侵入し、トラブルを引き起こす
- 急病人が発生しても適切な対応ができない
事前に計画を立てておくことで、こうしたリスクを最小限に抑えることが可能です。
2. 許可取得に必要
警察や自治体の許可が必要なイベントでは、適切な警備計画がないと開催自体が難しくなります。
- 道路使用許可が下りない(マラソン・祭りなど)
- 警備体制の不備を指摘され、再提出を求められる
事前にしっかりと警備計画を作成し、スムーズに許可を取得することが大切です。
3. スタッフ・警備員の混乱防止
警備計画書がないと、警備員やスタッフが何をすべきか分からず、
- 配置が不明確で対応が遅れる
- 緊急時の役割分担が決まっておらず、混乱が発生する
- 無線機などの連携が取れず、指示が伝わらない
という問題が起こる可能性があります。
警備計画書に記載すべき内容
警備計画書には、警備業務の詳細や緊急時の対応策を明確に記載する 必要があります。適切な警備計画書を作成する事で、警備員や関係者が統一された指示のもとで動けるようになり、安全なイベント運営が可能になります。
では、具体的にどのような項目を盛り込むべきかを解説します。
1. 基本情報
警備計画書の冒頭には、イベントの基本情報を記載します。
- イベント名(例:〇〇フェスティバル2025)
- 開催日時(例:2025年8月10日 10:00~18:00)
- 開催場所(例:〇〇公園 特設会場)
- 主催者情報(団体名・責任者名・連絡先)
- 想定来場者数(例:5,000人)
この基本情報は、警察・自治体への申請時にも必要となるため、正確に記載することが重要です。
2. 警備体制
イベントの種類や規模に応じて、どのような警備を行うのか を具体的に定めます。
警備員の配置計画
- 入場ゲート(不審物チェック・金属探知機の使用)
- 会場内巡回(混雑の監視・トラブル発生時の対応)
- ステージ前(危険行為の防止・出演者エリアの警備)
- 駐車場・周辺道路(交通誘導・不審者対応)
警備員の配置図を添付することで、誰がどの位置で業務を行うのかが明確になります。
警備員の人数と役割
- 総警備員数(例:30名)
- 指揮者(警備全体の統括)
- エリアリーダー(各エリアの監督者)
- 一般警備員(入場ゲート・巡回・交通誘導などを担当)
イベントの規模によっては、民間警備員に加えて警察官や消防スタッフの配置も検討する必要があります。
3. 来場者の動線管理
来場者がスムーズに移動できるよう、動線計画 を策定します。
- 入場・退場ルートの設定(混雑を避けるための一方通行の導入など)
- 各エリアの最大収容人数の設定(会場の許容人数を超えないようにする)
- トイレ・休憩スペースの確保(混雑回避のための分散配置)
動線計画は、安全確保だけでなく、来場者が快適にイベントを楽しむためにも重要な要素です。
4. 緊急時の対応策
万が一のトラブルに備え、緊急時の対応フロー を明確に定めます。
主なリスクと対応方法
- 火災発生時(消火器の設置場所・避難経路の確保)
- 不審者・危険物発見時(警察への通報手順・退去措置)
- 体調不良・怪我人発生時(救護所への搬送・救急隊の手配)
また、警備員全員が無線機で連携を取れるよう、指揮系統 も明確に記載します。
5. 関係機関との連携
警備計画書には、警察・消防・自治体との協力体制 についても記載します。
- 道路使用許可の申請状況
- 警察・消防との事前協議の実施内容
- 緊急時の連絡先リスト
特に大規模なイベントでは、関係機関との連携がスムーズに取れるよう、事前に協議を行い、計画書に反映させることが必須 です。
警備計画書を作成する際のポイントと注意点
警備計画書は、イベントの安全を確保するための重要な資料です。しかし、計画が不十分だと、当日の警備体制が機能せず、混乱や事故につながる可能性があります。
1. 来場者数やイベント規模に応じた計画を立てる
警備計画は、イベントの規模や来場者数に応じて適切に策定 する必要があります。
来場者数と警備員の必要人数
一般的な目安として、
- 小規模イベント(~500人):10~15名程度の警備員
- 中規模イベント(1,000~5,000人):20~50名の警備員
- 大規模イベント(10,000人以上):50名以上の警備員
ただし、会場の広さやイベントの特性によって必要な警備員数は変動するため、事前に十分なシミュレーションを行うことが重要 です。
2. 動線計画は混雑時を想定して設計する
来場者の流れがスムーズでないと、混雑による危険が生じます。特に入場・退場時は集中しやすいため、事前に混雑対策を考慮 しましょう。
動線設計のポイント
- 入場・退場ルートを分離する(一方通行を導入することで混雑を緩和)
- 案内看板や警備員の配置を最適化(適切な場所に誘導員を配置)
- 入場ゲート数を増やす(ピーク時の混雑を回避)
また、会場のどこで混雑が発生しやすいかを事前に予測し、重点的に警備員を配置 することが重要です。
3. 緊急時の対応手順を明確に記載する
イベントでは、突発的なトラブルが発生する可能性があります。そのため、警備計画書には緊急対応のフローを具体的に記載 し、全員が適切に対応できるようにする必要があります。
想定される緊急事態と対応策
トラブルの種類対応策
・火災発生消火器の設置位置
・避難誘導の方法を記載
・不審者対応退去手順
・警察への連絡フローを明記迷子
・体調不良者対応救護所への誘導方法
・スタッフの役割分担
また、警備員が連携しやすいよう、無線機の使用ルールや緊急連絡先 も明記しておくとよいでしょう。
4. 事前に警察・消防・自治体と連携する
大規模イベントでは、関係機関と連携して警備計画を作成することが求められます。
連携が必要な機関
- 警察(雑踏警備・交通規制・不審者対応)
- 消防(火災・救護対応)
- 自治体(騒音規制・道路使用許可など)
特に警察との事前協議は、混雑時の誘導や不審者対策をスムーズに進めるために不可欠 です。イベントの規模によっては、警察官が会場周辺に配置されるケースもあるため、協力体制を整えておきましょう。
5. 実際の現場を想定した計画を立てる
警備計画書を作成する際には、実際のイベント会場の状況を考慮 しなければなりません。事前に現地調査を行い、以下のような点を確認しましょう。
現地調査のチェックポイント
- 会場の地形・広さ(避難経路や警備員の配置に影響)
- 周辺の交通状況(道路の混雑度や駐車場の確保)
- 過去のイベントデータ(混雑発生ポイント・クレームの有無)
机上の計画だけでは不十分なため、実際の現場での動線確認やシミュレーションを行うことが重要 です。
警備計画書を活用したスムーズな警備業務の進め方
警備計画書は、作成しただけでは意味がなく、実際の警備業務に適切に活用することが重要 です。
1. 警備計画の周知と役割分担の明確化
警備計画書を作成したら、事前に関係者全員に内容を共有し、役割分担を明確にすることが重要 です。特に、大規模イベントでは警備員の人数が多いため、全員が統一された行動をとれるようにする必要があります。
周知すべき主な内容
- 警備エリアと担当者の配置(入場ゲート、会場内巡回、緊急時の誘導など)
- 警備員ごとの役割(入口の持ち物検査担当、ステージ周辺警備、救護対応など)
- 無線機・連絡手段の確認(緊急時に迅速な連携が取れるよう設定)
事前に警備スタッフ向けのブリーフィング(事前説明会)を実施し、計画内容を十分に理解させる ことが重要です。
2. 警備体制の最終チェックと現地シミュレーション
警備業務を本番で円滑に進めるために、事前に実際の会場でシミュレーションを行い、問題点を洗い出すことが必要 です。
現地シミュレーションのチェックポイント
- 入場・退場ルートの動線確認(混雑しやすい箇所を特定し、誘導方法を決定)
- 緊急時の避難経路の確認(想定されるトラブルごとに対応方法をシミュレーション)
- 各警備員の配置確認(適切なポジションに配置されているか最終チェック)
これにより、計画上では気づかなかった課題を事前に発見し、必要に応じて警備計画を修正することができます。
3. イベント当日の警備業務の進め方
警備計画書を活用しながら、当日の業務をスムーズに進めることが重要です。特に、以下のポイントを押さえることで、より効果的な警備が可能になります。
イベント開始前
- 警備員全員に最終ブリーフィングを実施(役割・連絡手段・緊急時対応の確認)
- 会場周辺の状況確認(交通渋滞や人の流れを把握し、必要に応じて警備配置を調整)
- 入場ゲートの事前チェック(金属探知機・持ち物検査の準備状況を確認)
イベント中
- 無線機を活用し、警備員同士の情報共有を徹底
- 会場内を巡回し、不審者や危険行為を早期発見
- 来場者の動きに応じて警備体制を適宜調整
イベント終了後
- 来場者の退場をスムーズに誘導し、混雑を回避
- 忘れ物やトラブルがないか会場内を巡回
- 警備体制の振り返り(反省点を共有し、次回の改善につなげる)
4. 警備終了後の振り返りと改善策の検討
イベント終了後は、警備計画の振り返りを行い、次回の警備業務に活かせるよう改善策を検討 します。
振り返りのポイント
- 計画通りに警備業務を遂行できたか(問題が発生した場合、その原因を分析)
- 来場者・主催者からのフィードバック(安全面・利便性の向上につながる意見を収集)
- 改善すべき点の洗い出し(配置変更や誘導方法の見直しなど)
この振り返りを次回の警備計画に反映させることで、より効果的な警備体制を構築することができます。
作成した警備計画書を実際にどう活用するか?
警備計画書は作成するだけではなく、実際の警備業務で適切に運用することが重要です。計画を実践に落とし込むことで、イベント当日の警備がスムーズに機能し、来場者の安全確保につながります。ここでは、警備計画書の具体的な活用方法について解説します。
1. 事前のスタッフ共有と研修
警備計画書を最大限に活用するためには、警備スタッフ全員が計画内容を理解し、適切に行動できるように準備することが不可欠 です。
✅ 警備スタッフへの説明会を実施
- 目的:各警備員が担当業務を正しく理解し、当日の流れを把握する
- 内容:
- 警備計画書の説明(目的、警備範囲、リスク管理など)
- 各警備員の配置と役割
- 緊急時の対応手順(不審者対応、火災、急病人発生時の行動)
- 連絡手段(無線機の使用方法、緊急連絡先)
✅ 実地研修・シミュレーションの実施
- 事前に警備員を配置予定の現場で動線確認や避難誘導のシミュレーション を行う
- 実際の警備配置を想定し、役割ごとに行動を確認 する
- 想定されるトラブルごとに対応手順を練習 し、迅速な判断力を養う
例:シミュレーションの内容
シミュレーション項目 | 実施内容 |
来場者の流れを確認 | 入場ゲート・会場内・出口の動線をチェック |
緊急事態の対応 | 火災発生時の避難誘導、急病人対応の手順 |
不審者対応 | 通報・対応の流れ、警察との連携方法 |
イベント当日は、計画書をもとに警備業務を遂行します。計画通りに進行するために、警備本部が全体の進行を管理し、警備員が適切に業務を遂行することが求められます。
✅ 警備本部の設置と情報共有
- 会場内の 警備本部を拠点 にし、警備員がリアルタイムで状況を報告できる体制を整える
- 無線機や専用の連絡アプリを利用し、警備員同士の情報共有を徹底 する
- 警備計画書をもとに、時間ごとの警備スケジュールを確認 し、適宜修正を行う
✅ 役割ごとの警備業務の実行
役割担当業務入場ゲート警備持ち物検査・金属探知機によるチェック会場巡回警備不審者・迷惑行為の監視ステージ周辺警備アーティスト・VIPエリアの安全管理交通誘導警備駐車場・周辺道路での車両誘導緊急対応チーム事故・火災・急病人対応
✅ 緊急時の対応を迅速に実施
- 異常発生時は警備本部に速やかに報告 し、対応を指示
- 想定外のトラブルが発生した場合は、警備計画書の手順に従い適切に対応
- 事前に取り決めた警察・消防・救護チームとの連携体制を活用 し、被害を最小限に抑える
3. イベント終了後の振り返りと警備計画の改善
イベントが終了した後は、警備計画書を見直し、次回のイベントに向けた改善点をまとめることが重要です。
✅ 警備レポートの作成
イベント終了後、警備員からフィードバックを収集 し、警備レポートを作成します。
警備レポートの内容
- 警備体制の評価(適切だった点・改善すべき点)
- 想定外の事態とその対応(新たに必要な対策)
- 来場者の反応(警備に関するクレーム・意見)
✅ 改善点の整理と次回への反映
警備計画書に基づき、当日の問題点を整理し、次回のイベントに向けた改善策を提案します。
課題改善策入場時に行列が発生ゲートの増設、入場時間の分散化不審者対応が遅れた監視カメラの設置、警備員の増員交通誘導が混乱事前の案内表示の強化警備計画書を適切に活用し、安全なイベント運営を実現
警備計画書は、イベントの安全を守るための重要なツール です。しかし、作成するだけでは意味がなく、事前の共有・当日の実践・終了後の振り返りまで一貫して活用することが大切 です。
ガードアクシスでは、警備計画書の作成から警備業務の実施、事後のレポート作成までトータルでサポート いたします。
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